つくしをとってきた。毎年春になると、お母さんが卵とじにするのがすきで、たお氏が小さいときに一緒につくし狩によくでかけたものだった。
もう採れる場所がすごく少なくて、ぜんぜん生えていなかったつくし。
料理にしたら、ほんのちょびっとにしかならないけれど、
習った記憶もないつくしの卵とじを作ってみた朝だった。
そういえばこの前すこし暑い日に、なんとなく
「おいなりさんが食べたそう」と感じたので、珍しくおいなりさんを煮て酢飯を作って握ってみた。
市販のおいなりさんは、味が濃くて甘くて食べれても1個くらいだけど、たまにお母さんが大量にこしらえるおいなりさんは、いくらでも食べれるような
そんな感じがする料理だった。
どこでも買えるからこそ、ほとんど手作りで作ったりしないものこそ、
作ると美味しいのって不思議だよね。
つくしというのはしかし、あらためてよく見てみると実に不可思議な植物である。野菜とは言い難いけど、草でもなく、つくしはつくし。
何本か採取して、奇妙な存在だなと思った。
外国では見かけたことがない。春の風物詩。
わたしは甘辛い卵とじも全然好きじゃないし、自分はほとんど食べないけど、きっとこの先も春が来るたびに、お母さんがいなくなったあとも
日本に住む限り、つくしのことを毎年思い出して優しいきもちになるのだろうと思う。
ところで英語でつくしはHorsetail というらしい。まいちんの好きなお馬さんパッカパッカのしっぽ。
しかしよくよく調べてみると、つくしというのは、根っこで緑いろの葉っぱ部分と連結しているらしい不思議な構成になっているらしく、
その葉っぱぶぶんは日本語でスギナと呼ぶらしい。漢方のお茶なんかに使われるみたい。(どんな味なんだろう)
英語でのホーステールは、そのスギナの部分を指しており、我々の知るつくし部分を食べる情報は見つからなかった。
https://www.herbazest.com/herbs/horsetail
お茶とかサプリメントとかで使うみたい。
いろいろ、利尿作用があったり免疫によかったり骨や髪にもよいと書いてある。そのうちお茶とか試してみよう。
おいなりさんを持って、たきのおばあちゃんと春分にお墓参りにいったとき、わたしは朝からブンブン泣きながら怒っていた。
お母さんがお父さんの留守に悲しくて寂しくて怖いのに言わずに、ずっと文句を言っていて、お父さんはそれを知らずに平気で外をうろうろしていて、なんかもうそういう場にいると今だにたまらなくて涙がいっぱい出てきちゃうんだね。
90を過ぎたおばあちゃんは、ずっとずっと一人暮らしをしていて、どれほど寂しかったり心細い時間を過ごしてきたんだろう、と思って
お弁当くらしかできないけどと思って、せっせと週2回愛を込めて作るんだけど。
帰り際にお母さんとお父さんのことを、おばあちゃんに吐き出したら泣いちゃって、そんな時にも穏やかに、まいちんに一万円をくれるおばあちゃんなのであった←会うたびにお金くれるおばあちゃん
わたしは家族も親戚も苦手なひとたちばっかりだったけど、多気のおばあちゃんが、大好きなんだ。
長生きしてくれて嬉しいし、そばにいくと、なぜか涙がじわっと浮かんできて、愛に包まれる感じがする。
みんなが全力を尽くしていて、誰も悪くなくて、1人で我慢してて
誰も責めるに値しなくて、くたくたになるまで頑張って自己犠牲をしても、ほんのちょっとの助け合いや声の掛け合いで
誰も困らずに苦しまないように、できるのに…。
いまだにそう思う日もあるけど、わたしはわたしで、自分の幸せとおもう関わり方を大切にしてゆく。
なんか、自分より弱かったり、自分よりも助けが必要な場所で、勝手に身体が動くみたいにして自然と手が出るのがあたりまえなのと違って
日本のみんなは、いつも、考えてる感じがする。
水が自然に、高い場所から低い場所に流れたり、
暖かいものと冷たいものが混じり合ったときに温度が動いたり
パッと声をかけてサッと知らないひとでも手をかけられるような
そんなふうに、ひとが自然に動けるようになったらいいのに。
いつも見ていてそう願ってるよ。
お母さんは見たところ元気そうで、ごはんもちゃんと食べている。
買ってきてあった惣菜に微妙な顔をしていたので、もち食うかと聞いたら、「そりゃもちがいいわ」と言ったので、小松菜の入ったシンプルな雑煮を作って食べさせた夜だった。
まいを世話するしかしたことのないお母さんは、まいに世話されるのに慣れておらず、妹はどこかとまさぐっていた。(細かいところまで気の利く妹は東京に住んでいる)
「あの子は本当にいてくれると気がきくから。」と言ったので、「そりゃちかちゃんはお母さんにそっくりだからね。」と言うと、
低く笑いながら、「そんなことないわ〜」と言うお母さんだった。
お母さんとちかちゃんは、昔から本当によく似てるなと思う。
底なしの優しさも、自分を削ってボロボロになってしまうところも。センスの良さも、色白の透き通った肌も。
今日はフィレオフィッシュを買って行ったらおやつに食べてくれたし、つくしは美味しかった、もっと食べたかった。と言っていた。
「つくしは生えてない。また来年ね。」
来年まで生きてたらね。
まいはお母さんが死んじゃったら泣いちゃうなぁ。