半年以上、待ちに焦がれてようやくお目見えしたイルカの赤ちゃんは、本当に美しかった。
この地球の、同じ世界を生きる仲間に、こんなにしなやかで美しいクリーチャーがいるんだなと思うだけで、なんだか自分まで誇らしげに感じるくらいに。
雄大な世界の海の中で、果てしなく自由に悠々と仲間と旅することができる中で
幸か不幸か選ばれて、ちいさな箱の水槽の中に入れられたイルカたち
それはそれは、高い愛でしかなし得ない選択なんだよ。
そんな不自由な場所で、わたしたちの手が届く場所で、愛そのものを目の前で教えてくれる。
無垢であることが、どれだけ心に訴えかけるかとか、ただその存在自体が美しくて、それで良いこととか。
彼らを見ていると、いつも自然と涙が頬を伝っていて
嬉しいとも悲しいともちがう、ただ愛に共鳴するときのその涙を、わたしはいつも追いかけているのだとおもう。
山下さんの手を引かれて初めて一緒におでかけに連れて行ってもらった水族館と
その日の、どまんなかで生まれた、イルカの赤ちゃん
また見に連れて行ってもらう約束だけが残されて、取り残されて何度も失敗し、
1人では行けなかったわたしを
横浜に住む妹夫婦が拾ってくれて、連れて行ってくれた。
まるで、あの日と同じようにそれは、澄んだ空の下で嬉しくて幸せで、なんどもその愛を噛み締めて、嬉しかった、楽しかったと何度も何度も呟いた。
山下さんとの約束を、妹が代わりに一緒に叶えてくれたみたいだった。
大きな水槽の前でずっと立って延々と眺めていられるような気持ちがして、その手でイルカの赤ちゃんの写真を彼にも送った。
世界で一番大好きなひとと、世界で見つけた美しくてすばらしくてすてきなものを
いつも共有できたらうれしい。
またいつか、山下さんに会えたら、手をつないでイルカの赤ちゃんが大きくなったところを
見に行きたいな。
この世界に、こんなにも綺麗な動物がいることが、ただでさえ美しいのにその赤ちゃんが間近で見られるなんて。
奇跡みたいだよ。