小学校に入ってはじめての運動会。
小さなチャレンジを、少しづつでいいからやってくこと。わたしもタオくんも山下さんもみんな。
とりあえず、去年の保育園の運動会もおととしの運動会もビリケツ4位だったタオさん、
今年はかけっこをがんばってほしかったので少し練習した。
といっても早く走る練習じゃなくて、心の持ち方のことだけど。
タオくんは人と競うことを苦手としてて、がんばるポイントでがんばることができない。
優しくて、勝ちを譲ってあげるとかいいことだし、別にいつも一位を取らないといけないとか全然ないけど、ただ「ベストを尽くす」ってことの素晴らしさとか尊さは知ってほしかった。
ヘラヘラ笑ってごまかすんじゃなくてやるときゃやる男になってほしいしな。
べつに3位でも4位でもいいから、全力で走ること目標に話してたんだけど、どうも真剣に走ろうとすると笑ってしまうタオさん。
結局、笑わずにまじめに走る練習をちょっとしたけどイマイチで、もういいやと思って運動会当日の朝、送る車の中で
「とりあえずガンバレ。なんかもうよくわかんないけど、笑ってようが何だろうが一位を取ればとりあえずふざけてたってなんだっていいから、とりあえず一位を取ってこい」
と言った。うんと頷いてた。(ほんまかいなと思いつつ)
失敗してもまた今年も4位でも別に構いやしないから、
ただ頑張ってきてほしい。
そして本番、本当にかけっこで1番を取ったタオさんだった。
やればできるんじゃんか。すごいよ。
○
朝から肌寒い晴れた空の下、カメラをぶら下げた山下さんと手を繋いで、学校まで歩いて
田んぼの合間を縫って歩くのは
ただただ幸せだった。
これまで、保育園の行事もことごとく一人で参加しては必死でカメラを構えて、ソワソワして不安ばっかりで、人混みや家族連れの中で楽しむ余裕なんてほとんどなかったから。
一緒に参加してくれるだけでもう胸がいっぱいな気がした。
タオを探して、写真撮るスポットを探して、その間も山下さんが側で手を繋いでいてくれたから迷子にならずにずっと安心だった1日。
こんなにゆったりした気持ちでいられて、焦って写真を撮らなくても山下さんがカメラ係をやってくれて、ニコニコタオくんを追いかけることができた幸せな運動会
わたしも初めての経験ばっかりだった。
かけっこの決定的瞬間をカメラに収めようと、2人でタオくんの出番を待ちながらやいのやいの言う時間はただあったかかった。
「運動会だから、夜はみんなで飯食いに行こう」と言われたとき、キョトンとして意味がわからなかったんだけど、お祝いというか
おつかれさまの時に、みんなでご飯に行くんだね。
なんてすてきなことをいつも与えてくれるんだろう。タオくんの希望でくるくる寿司に連れて行ってもらうことになって、楽しくて、嬉しくて、くるくる寿司でご飯を食べながら、めいっぱい尽くしてくれる山下さんの愛に、涙が何度も滲んだ。
家に帰ってきたタオくんに、山下さんと2人で「頑張ったね!」と何度も言った。
そしたらタオくんが勝因のことを教えてくれた。
「朝ママが車で、笑ってもいいから1位を取れって言ったんだよ。」
それを聞いて、なるほど彼の中では、何位を取るかよりも、つい笑ってしまうことが抑えきれないのが問題だったのかと思った。
笑うな!真剣にやれ!と言い続けてたときは全然走れなかったタオさんだけど、
【笑ってもいいから一位取ってこい】
で安心したのか、それがよかったらしい。人って、本当にシンプルだよな、もしかしたら全部、小難しいこと抜きで
「とりあえず1番とってきてね」
でいいのかもしれないと思った良い体験だった。
運動会当日の朝、洗い物やっとくわ〜と山下さんに送り出され、
チッ、送ってくださいとお願いすればよかった。めんどくさいが頑張ろう…
そう思いながらタオさんを送り届けたんだけど、もしかしてその言葉をかける時間が無かったら
タオさんはまた今年も4位だったかもしれないなと思った。
タオくんがんばって
りゅうじもがんばって
ママもがんばって
みんなが本当に一丸となれた最高にすてきな週末だったよ。
本当にありがとう。
最高のチームだね!
うれしすぎて駆け寄る怪しい母
がんばって追い抜き1位のたおさん
ずっとたおくんを追いかけてカメラを忘れてしまったというママの友達の、他の子供まで撮影してくれてた優しい山下さん。
がんばった後のおひるごはんに、おいしいのをたべてほしいなと思って
朝はお弁当を持たせてあげた。
なにからなにまで、素敵な時間だったな。